2015.3.28青少年のネット問題は日本もドイツも同じ!!(ドイツからの教育視察団から学んだ)
昨日、東京代々木にある国立オリンピック記念青少年センターでドイツからの教育視察団の皆さんに、日本における情報モラル教育の現状と課題、取組についてお話をするという貴重な機会を得た。ドイツ連邦家庭・高齢者・女性・青少年省と日本の文部科学省が主催し、日本ではオリンピック青少年センターの母体である国立青少年教育振興機構が実施している何年も続く教育交流事業である。
最後の写真をご覧いただきたいが、事前に日本語訳された質問がこれだけ届いていた。その熱心さと鋭さに、これはえらいな講義を頼まれたと思ったが、気合いが入ったのは言うまでもない。最初の写真の様に素晴らしい通訳さんの力量で、私のプレゼンシートはすべてドイツ語に翻訳されたものを利用した。
朝9:30から昼までの予定時間であったが、都度都度、質問があり、私も思わず「ドイツはどうですか?」と逆に聞き返したため、途中2度の休憩はあったが、終了は延長に延長し、なんと午後1:30であった。こんなに長時間の講演は数多く場数を踏んできた私にも初めての経験であった。
参加されている方々は、州の家庭教育相談所や青少年局の職員、市役所の青少年課、大学病院の心療内科医、カウンセラー、教会で依存症対策をされているNPOの方々など、ネット問題対策の色々な立場の方々であった。2週間の滞在のうち、今日の講義はとても楽しみしていた、と休憩時間にある方に言われたが、正直、これだけの質問を講義中に頂戴するとは想定外だった。それも話を遮らない様に指を立てて、自分には質問の意志があるとアピールし、上手に通訳の方がさばいておられた。全員が質問し、一人平均3回以上であった。
その多くの質問から、日本と欧州の考え方の違いも実に勉強になった。子どもが起こす事件に親の責任が問われる裁判が増えているが、彼らの考えでは「その事件が起こった時に親は監督出来る立場にあったのか」、そうでないなら親に責任はない、と実に明快な回答もくれた。正直、日本では子どもの問題はすべて親の責任という風潮があるがまったく納得いかない様子であった。また、ネットの問題にどの様な制度が整っているか、対応はどうしているか等々、あいまいさが得意の日本と比べ、問題に対応する機関や取組などのきちんとした制度設計にとても関心があるようだった。また、日本がこの問題にはかなり進んでいるとの大きな誤解?ある認識が欧米にはあることもよく分かった。
しかし、教育ICTの話になると、世界有数の電子機器を製造して輸出し、IT立国日本のイメージが先行しているせいか、すべての日本の学校ではタブレットが勉強に使われているとの大きな誤解があるようで、タブレット整備は2020年が目標との国の指針を伝えたら以外な表情をされた。また、1学級が40名の生徒定員で、日本の教師はとにかく忙しいとの話には相当にビックリされていた。
欧米は20名定員が世界標準で、ドイツの学校は基本的に昼までである。午後は帰宅して地域のクラブチームでサッカーやバレエ、テニスなどで運動や文化的な活動をするのがドイツの子ども達であり、先生は午後には翌日の授業準備をして午後5時には仕事を終える。ゆったりした教育環境で学ぶ子ども達、授業に専念できる教師の勤務環境は日本の実情と照らして実に羨ましい限りである。
ただ、青少年のネットの問題については日本もドイツも変わらない。SNS、特にコミュニケーションアプリの利用についてのトラブルは似ている。日本ではラインというサービスがよく話題になるが、ドイツではラインより「What’s App!」というサービスの利用者が多く、冷蔵庫事件よりもひどい暴力的な事件の動画が投稿されたり、依存症の問題はもっと深刻であるとの認識を感じた。堪能な通訳の方を通してではあったがストレスなく、深化した意見交換も出来た。また、何と、帰国前日の金曜日には、日本視察の報告会とドイツの事例紹介をオリンピック青少年センターでされる予定である。土曜に総務省近畿総合通信局の用事で大阪予定だが、金曜に上京し、これに参加してから大阪に向かう予定に急遽、変更した。
4時間という長丁場でさすがに疲れたが、充実した有意義な時間はあっという間だった。また、彼らの熱心な反応にとても楽しかった。ドイツ語に堪能な熊本大学法学部の岡田教授に教わったドイツ語の挨拶から話を始めたら拍手まで起こった(だだし、それ以降の講義はもちろん日本語です)。最後には3枚目の写真の様に代表の方から謝辞を、また、皆さんで持ち寄ったと思われるドイツのお土産まで頂戴した。ベルリン紹介の素晴らしい本も入っていた。30年もバイエルン製のドイツ車に乗っていることもある。貯まっているANAのマイルを使って、是非、ドイツ訪問をしたいと思った日でもあった。